シャカリ・コルマ

20代前半、初めて行った海外がインドの貧乏旅行でした。
インドの喧騒、劣悪な環境、人間と神様がごちゃまぜになったカオスの世界の中で、刺激的で辛い食事が続いて胃がヘトヘトに疲れ、にっちもさっちもいかなくなったときは、敗北した気分で三星ホテルの高級レストランに行き、汚れひとつないテーブルに座り、銀食器で運ばれてくるムスリム料理を食べる。これが若い頃、インドを旅しているときの避難方法でした。静寂な店内、真っ白なテーブルクロス、ハエが飛んでいない席、正装したホールのインド人、何から何まで違和感を感じるのですが、カレーの味はさすがに洗練されていて美味しく、激しく揺れ動いていた胃が収まります。心に残っているのはコルマカレー。マイルドで口当たりが柔らかく、疲れた胃には優しい北インドのカレーです。静かに食べ終わると、また外の荒々しいカオスの世界へ飛び込む元気が出てくるのです。

このカレーの「シャカリ」は野菜、「コルマ」はクリーミーという意味です。グレービーソースを作り、調理済みの野菜を入れてさっと煮こめば出来上がり。意外に簡単に作れます。ホールトマト缶と生クリームを入れるカレーで、水は一切加えません。厚揚などを入れても美味しいのですが、私のお気に入りは夏野菜を使ったカレーです。
(『野菜料理の365日〜しばにさんちの食卓」にレシピ掲載)