パンプキンパイ

ある年のクリスマスシーズン、アメリカ滞在中にノースキャロライナに住んでいるの友人でオルガン奏者のドロシー・パパダコスさんの家に招かれました。アメリカのクリスマスは盛大で、あちこちの家のパーティーに毎日のように行き、たくさんのごちそうを口にしたのですが、いったい何を食べたのか、その記憶はほとんどありません。ただひとつ、今でも思い出すのはドロシーさんが車で立ち寄って買ったパンプキンパイです。飾り気もなく、看板があるだけの小さなケーキ屋に次々とお客さんが入っていきます。目当てはこの店名物のパンプキンパイ。お店の中はスパイスと甘い香りが漂い、何種類かのケーキが無造作に置かれています。パンプキンパイは奥からどんどん運ばれてお客さんの手に渡っていきます。その褐色の大きなパンプキンパイの美味しさは、今でも脳裏に焼き付いているほどです。なめらかな舌触り、スパイスの香りはやや強めで、その味はやわらかく、甘さもほどよく、濃厚なのにあっさりしています。大きな一切れがあっという間に食べられてしまうほどの美味しさでした。(著書’焼き菓子レシピノート’から抜粋)

今はちょうどパンプキンパイのシーズン。このパンプキンパイはスパイス数種類とカルア(コーヒーリキュール)を入れて「香り」を重視しました。我が家の紅葉はすっかり終わってしまったけど、このパンプキンパイでしばし秋満喫です。